わたしの創作のはじまりは、版画による作品でしたが、それまでも、学校の授業や遊びでいろいろな版画手法による経験がありました。芋版、紙版、木版、コラ版、型版、日光写真など。
自主的な制作として版画を始めるきっかけとなったのは、棟方志功の作品との出会いでした。棟方志功の初期の版画作品は、川上澄生の作品に影響を受けた創作版画でしたが、その後、民芸運動や仏教の影響を受け板画という独自の手法となります。板の上で彫刻刀で直接、絵を書くように、板を彫る手法です。そして、詩や言葉を合体した、手色彩による独創的な作品に引き付けられ、それを真似るような作品を作りました。棟方志功の板画は、それ以前も以後においても、非版画的な手法です。私が棟方志功の作品に魅せられた理由は、そこにあったと考えています。
わたしの作品は、それをきっかけに、逆により版画的な魅力に嵌っていきます。版分けによる多色刷り版画、木版とシルクスクリーンの併用など。その後、1982年頃、自分の創作と版画との関係を突き詰めて考えるようになり、現在の作品の原形に到達することになります。
その後の絵画作品においても、いろいろな版画の手法を取り入れていくようになります。